恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
難攻不落

どう突き崩す

「おはようございます」

週が明けた月曜日、いつものように飲み物をデスクまで持って行った私に、彼は何事もなかったかのように挨拶をした。


私は飲み物をのせたトレーが震えるのを感じながら、
落さないように気を付けてデスクの上に置く。
それ以上何か言葉を交わす自信がなくて、足早に給湯室に逃げ込む。

どうやったら彼の防御壁を突き崩せるのか?

給湯室で、暴れる鼓動が収まるのを待ちながら、

私の頭にはそれがよぎっていた。

いい年して盛りのついた何とかでもあるまいし。

私はいったいどうしたんだろう…




こんな状態がまた翌週も続き、その週が明けた今日は
朝から凡ミスを繰り返して、月曜日の午前中が
終わったところにもかかわらずもう週末の16:45くらいの
気分と疲労感だった。

しかし、当の本人は相変わらず穏やかな笑みを浮かべながら、
私と同じ部屋でいつものように仕事をこなしている。


今週一週間は長くなりそう…

私は大きなため息をついた。

「おい、相良どうした?」

白石課長が、面白がるように声をかけてきた。


「いえ、別に何も」


「そうか?週末子どもたちと遊びすぎたか?」

「それとも…」

そのあと課長は私に耳打ちするようにすっと寄って・・・


「何かいいことでもあったのか?」

そう意地悪い笑みを浮かべ片方の眉を上げて言った。

「本当に何も」

私は席を立ってその場を立ち去ろうとした。

「おいおいそんなに怒らなくてもいいじゃないか?」

課長は私を追いかけてくる。


「すまん。すまん。
からかうつもりはなかったんだ。
お詫びに昼飯おごってやるから…」

昼の言葉に私は振り返った。

「なら仕方がありませんね」

そこに佐々木君も入ってきた。

「課長ずるいですよ。お昼、一人だけ連れて
抜け駆けするなんて。僕もご一緒します」

「白石俺も混ぜてくれ」

部屋をのぞきに来ていた遠藤課長も抜かりなくやってきた。

「課長、ここまで来たら僕もついでに」


課長にとっては段々空気が怪しい方向に向かっていく。

課長はあたりを見回してから、

「今ここに残ってるやつはまとめて行くか!!」

「はい」


私、佐々木君、遠藤課長を含む居残り組5人は
元気に返事をして、外に向かって歩き出した。



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