桜色ノ恋謌
桜小路公佳の名前は、『天才子役』という意味でなら知ってる。



6才の時にデビューして、CMやドラマに引っ張りだこだったよね?


『桜小路公佳が出たドラマは必ず当たる』って、昔週刊紙で読んだことある……けど。



「なんで桜小路公佳?分かんない」

「桜小路が俺らと同じクラスだって、お前知ってんの?」



知らない。そうなの?



「お前、知らなかったんだろ。………とか言う俺も今日知ったんだけど。お互い仕事で忙しいから顔を合わせるのは珍しいし」

「だからなんで桜小路さんが、あたしをイジメるの?そこが分かんない」





そんな天才様が、なんであたしみたいに箸にも棒にも引っ掛かんないような人間を、イジメたりするわけよ?




「アイツは芸歴が長いだけはあって、取り巻きが一種の信者みたいなもんなんだよ。それに、入学式ん時にお前が桜小路に挨拶に行かなかったのが気に入らなかったんだとよ」


「………はあ……」



そうですか。


でもあたし桜小路さんが同じクラスだなんて知らなかったし。

教室で桜小路さんに会ったことないし。



「卑屈な取り巻きにしてみりゃムカつくんだと。ぽっと出の新人の癖に桜小路様に挨拶もしないなんて何様だ?ってな。クラスの大半が桜小路信者らしいけどな」

「……はあ……」


もう、『はあ』しか言えない。


桜小路さんに面と向かってそう言われたなら、悔しいけどまだ我慢できる。


でも、取り巻きって何よ?


意味分かんない。



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