桜色ノ恋謌




―――煌めく海。ぎらぎらと照りつける太陽。


そして……。


「姉ちゃん達、泳がねぇのかよ !?」




……いいなぁ、和生は泳げて。


しかも中学生のくせに彼女まで連れてきたし。末長く爆発しろ。




逗子・葉山への泊まり先はうちの家族と梶さんちのみんなで決めたらしい。


横浜や湘南だと今の時期は人が多いだろうから、意外な穴場の葉山がいいと薦めたのは恭哉くんだそうだ。




可愛いお店が何軒かあって、海で泳げないあたしは専らショッピングを楽しんでいる。


だって肌を焼けないんだもん。本当はあたしも海で泳ぎたいけどさ。




「咲絢、何か買うの?」



恭哉くんは「中学生のカップルなんかと一緒にいたくねぇよ」 とか言って、あたしの買い物に着いてきてくれてる。



お母さん達と梶さん達は4人でお風呂に入ってるから、結局初日はみんな自由行動になってしまった。


夜には小さな宴会場を借りて、全員揃って夕ご飯を食べるけど。



「………ここのシフォンケーキ、食べたい…」


食べ物のことを考えてたら、すごくお腹が空いてきた。もうお昼だからなぁ。


「まだ昼飯も食ってねーだろ。つか、どこで食う?何食いたい?」

「ここら辺よく分からないんだけど。やっぱ海が近いから、魚料理かなぁ…?」



分かった、と呟いて恭哉くんはあたしの手を取った。


小さい頃はよくこうして手を繋いでもらってたっけ。



懐かしくなって、へにゃっと笑った。



「なに変な顔して笑ってんの?」


あたしの変な笑い方は、目ざとくも恭哉くんに見られていたらしい。


「小さい頃みたいだなーって思って。昔はよくこうして手を繋いでたよね」




< 118 / 394 >

この作品をシェア

pagetop