桜色ノ恋謌

そんな淡い期待を胸に、二人が待つ山猫軒へと戻った。


もう店じまいしてしまった入り口の前で、倉木さんと高橋さんが並んで立って私を待っている。


私をみつけると、倉木さんがにこやかに話しかけてきた。


「こんな店よくみつけたね、如月さん。メニューが田舎風で面白いよ」

「倉木さんは何を注文したんですか?」

「俺?[わんこセット]とかいうやつ。餅料理が旨いね」

「お口に合ったようで、良かったです」


倉木さんと私、何気なく会話してる風に見えるけど、その実意識はずっと高橋さんの方に向いていた。


「高橋さんは?ご飯食べちゃいました?」


様子見ながら、高橋さんにも話を振ってみた。


「あ…。いえ、私はコーヒーだけ。咲絢、今から食事にしましょうか…って話してたんだけど。……その、3人で」

「もっちろん。いいですよ!」



俯いてはにかみながら話す高橋さんを見れば、倉木さんとの話し合いが決して無駄ではなかったんだろうな、と予想できる。


これで、いいのかな?


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