桜色ノ恋謌
「違う。俺は結局、咲絢の元に戻るために、今まで何もできてなくてさ。陽菜乃に振り回されっぱなしの毎日だった。満足できる結果も出せずに。梶さんに比べたら、俺、すげー情けないよな……」

「……恭哉は……」


なんと言えばいいのか分からず、思わず口ごもる。



こないだまで私だって知らなかったんだけど。


恭哉が私のために、そこまで名声を欲しがって、それを手に入れてた……なんて。


全部私のためだったなんて。



その恭哉と鳥羽さんを比べるなんて、できないよ。


大体、私が鳥羽さんから貰ったネックレスを外したのは、鳥羽さんと陽菜乃ちゃんがキスしてるのを見たときだったし。



「……恭哉と鳥羽さんを比べるとか出来ないです。今の私にとって、一番大事なのは恭哉との将来のはずだから……」

「……だよな。梶さんが後ろ楯なら、咲絢は今以上にこの業界では成功するだろうしな……」


……だから止めてよ。


そんなに切ない目で私を見ないでよ。



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