桜色ノ恋謌
「前に来た時は『遊び倒すんだー!』って張り切ってたのにな。咲絢はすっかり老け込んで……」

「一言多いよ!」


思わずがちゃん、と音をたててナイフを皿に叩きつけてしまった。




げ、せっかく美味しそうなフォアグラだったのにソースが飛んじゃった。勿体ない。




「……嘘だって。それだけ落ち着いた大人の女性になった…ってことだよ。なんつーか……、色気出てきたし」

「……っ。たか…鳥羽さんのばか」




面と向かって『大人になった』なんて言われると、恥ずかしくて赤面モノだ。




だから、つい悪態をついて鳥羽さんを軽く睨んだ。




一瞬、鳥羽さんを名前で呼びそうになったけど、ギリギリのところで自制心が働いてくれた。


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