桜色ノ恋謌


恭哉が迎えに来たのは、電話を切ってからきっかり30分後だった。



駐車場に着いたというメールを読むと、慌ただしく控え室を飛び出す。


途中で公佳ちゃんとすれ違ったけど、「また明日」とだけ挨拶して、その場を離れた。







駐車場に停められた、恭哉の車に近づいて窓を軽く叩く。


電話中だった恭哉は私の姿を認めて一言二言会話を交わしてから、通話を切った。


恭哉が車を降りて私のために助手席のドアを開けてくれると、ためらいながらもそこに乗り込む。



恭哉と付き合いだしてからこんなことはなかったのに、最近になって感じる私自身の気持ちの違和感は何なのだろう?




今までは、恭哉と一緒にいても、こんな気持ちになることはなかったのに。



まるで、罪悪感のようで、自分自身が気持ち悪い。



「…なんか、あった?」

まるで、私の違和感を感じ取ったかのように、恭哉が聞いてきた。


「何もないよ」


そう取り繕う私の視線は、窓の外に移したまま。




なんでなんだろ。



鳥羽さんと再会する前の私は、恭哉に対してこんなに後ろ暗い気持ちなんかなかったのに。










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