桜色ノ恋謌

「咲絢。分かってると思うけど、咲絢のことを一番近くで見てきたのは俺だから。だから、咲絢が何を考えて何に悩んでるか、そのくらいわかってるから」

「え…」

「アイツじゃ、咲絢は守れない。いつだってそうだったろ？」

「…恭哉…」

「だから、変に自分の感情をごまかしてんじゃねーよ。はっきり言えよ。マネージャーのアイツのことも、気になってんだろ？」

「…うん…」

「分かった上で、改めて惚れ直させるって宣言してんの、俺は。だから、お前は負担に思うことねーから。そんなことになったら、仕事にまで差し支えるだろ」



恭哉はそう言って、私の頭を軽く小突いた。地味にこれ痛いぞ。


だけど、恭哉が私の気持ちを知っていてくれてたことに、少なくともほっとした。



このまま鳥羽さんへの気持ちを隠して恭哉と一緒にいるのは、苦痛だとも思っていたから。


だけど、恭哉は、私のそんな卑怯な気持ちを知っていても私に向き合ってくれているんだ。


それを思うとありがたくて、安心して、少し涙腺が緩んでしまった。



やっぱり、恭哉の胸になら、思いっきり甘えて飛び込むことができるんだ。



路肩に車を停めた恭哉にしがみついて、私はその胸の中でひとしきり泣いた。