桜色ノ恋謌



だけど。




「もし、そうだとしても、咲絢には関係ない。誰かが責任を取らなければならないとしたら、彼以外にはいない」






恭哉は冷たくそう言って。


私を無理やり立たせて、病室から抱え込むようにして連れだした。


恭哉の車に乗せられて、マンションの自室へと連れて行かれる。


かといって、強引なわけでもない。


腰に回された腕も、強く引っ張っているわけじゃない。



言うなれば、優しい檻。


今まではその腕の中は居心地がよくて、安心できる場所だった。


でも、鳥羽さんと再会してからは、妙に後ろめたい気持ちになってた。


その後ろめたさを摩り替えて、強気な態度で鳥羽さんに八つ当たりをしてた。




もしまた、鳥羽さんが私の前から消えるとしたら。



今度はもう、二度と会えなくなるような気がする。


「いつか会える」…そんな小さな希望は、もう望めない。


きっとそれは、予感でも予想でもなく、真実に近い確信。






だけど、その日はずっと恭哉が私を見張っていて、外に出るのも事務所に電話をかけるのも許してはもらえなかった。


事務所からの電話も恭哉が取った。その内容さえ、私には伝えられなくて。



恭哉はただ一言、「明日、今日の分のドラマの撮りなおしがあるから」とだけ言って、部屋を出て行った。








…ねぇ、鳥羽さん。


このまままた、何も言わずに「さよなら」なんて、そんなことはないよね…?










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