Sympathy For The Angel
「……何これ?牛肉?」

変わった味に気がついたのか、樹が怪訝そうな表情で皿をつついている。


ふふふ、カレーの味と匂いに誤魔化されれば良いさ!!


「アンタまさかレバー入れたんじゃ無いでしょうね!?」

「え…。何の事?」

しらばっくれてみたが、どうやら後の祭のようだ。


「おいこれレバーかよ!俺嫌いなんだけど!?」


鬼のような形相のエリカと樹に挟まれて、萎縮する私。


「だって美優紀の体に良いと思ったんだもん」

「分からないです、レバーの味。椿さん、ありがとうございます」

ほら見ろ、美優紀はちゃんと食べてるじゃないか。

「俺レバー超大好きッスよ」

ハヤトだって食べてるのにこの二人ときたら。



「ならハヤト、お前に肉全部やる」

樹は卑怯な手段を使ってハヤトに押し付け、意地でもレバーを食べなかった。






夕飯を食べ終わるとエリカと美優紀はソファーで休んでいたが、樹とハヤトはクラブに出勤しなければならない時間。


見送りのために靴を履いて玄関先まで出ると、強い北風が一陣吹き抜けて私の髪を巻き上げる。


ハヤトは樹が操る単車の後ろに、恐る恐る乗り付けている。


「気を付けてね」


遠ざかる二人のバイクを見送ると、どうしようもなく寂しい気持ちに襲われた。
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