Sympathy For The Angel
何か理由があるのなら、せめて私にも教えて欲しい。


「……beast?どこにいたって?」


唸るようなヒロの声で、私は現実に引き戻された。


「銀行横のコンビニの前。今から行っても逃げてんじゃないの?」


投げやりにエリカが吐き捨てた。


ヒロは携帯を取り出し、相手に指示を出して席を立った。


「……行くわ。つーか椿。明日の会議には来んだろ?少し話そうや。じゃ」


ヒロは一方的に会話を打ち切って、駆け出すように店を出た。


「……ったく。紅蓮の本業も全う出来ないようならチームの幹部なんか辞めちまえっつーの」


ぼやくエリカには全面的に賛同したい。

紅蓮は今や、有名事実のチームに過ぎないと敵対チームには馬鹿にされている。

そうでなければ態々敵対チームのbeastの奴等が紅蓮のホームに来る事なんか無いだろう。


beastだけではない。


最近、新興の『狂宴』というチームが頭角を現してきた。


チームの規模も構成員も根城も不明の狂宴に、紅蓮のコ達も何人かが病院送りにされている。

腹が立つなんてもんじゃない。


本当は私だって腸が煮えくり返っているんだ。



だが、私が紅蓮に対しての不満を口にすれば、それは蘭の末端にまで不安が広がる。

だから今はまだ、紅蓮に対しては何も言わない。



たとえ私自身が樹に見切りをつけていようとも。
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