桃橙 【完】
「安芸のことだって、そうです。安芸に…」


「安芸のせいよ…」



震えた声でお母さまが話す。



「安芸がっ…いなくなってから、この家はこんなにもおかしくなったのだわ!」


「はるかも……っ!」


「お兄様は、安芸を大切に思ってきましたから」


「もとはといえば!あの女と浮気をしていたあなたが原因ではありませんか!」



思わず火の粉が自分に向いたことに、由連は慌てて雅の母を宥める。


その隙をついて、雅は部屋を出た。


……絶対に、嫌。


重蔵さんのところになんて…


ここにいては、自分の身まで危ない。そう思いすぐに鞄に荷物をまとめ始めた。
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