桃橙 【完】
「総さん…」


「安芸、まずは青柳社長の話を聞け」


「お父さん…」



不安そうな安芸とは打って変わって、青柳社長は安芸に微笑んだ。



「安芸、私は春河家を許すつもりは毛頭ない。それは、話していたね」


「はい」


「もうすぐ春河家の経営する会社は路頭に迷うことになる」


「………」


「完全には潰さない。僅かな希望を残しながらここまで追い詰めてきた」


「けれど、春河は、残された希望を希望とは思わず、自らの手で握りつぶし、自分の保身を図ろうと迷走している」


「………」



まるで、その姿が目に浮かぶようだった。
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