桃橙 【完】
その声に、驚いて振り向いた。



「…お母さん」


「もう何電気もつけないでボーっとしてるの?」



その言葉に、もう日が沈んでいたのだと、慌てて立ち上がる。



「夕ご飯、買ってきたから。食べよ」


「…ごめんなさい、」



私の謝罪に笑いながら、買ってきたお弁当をレンジで温める。



「安芸、あんたまた暖房もつけないで…寒いじゃない」


「…あ、そんなに寒くなくて」


「もう、離れで一体どんな生活をしていたっていうの?」



眉間に皺を寄せて、困ったような怒ったような顔をするお母さんに、曖昧に笑った。
< 2 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop