桃橙 【完】
水嶋さんの顔を見れば、ひどく困惑しているのは見て取れた。


…もしかして



「家賃とか気にしてたりする?」


「えっ?」


「………」


「いくらなんですかっ?」



慌ててそれを今聞く水嶋さんに思わず吹き出した。



「あの…」


「ククッ…ごめん、ごめん。あんまり可愛いから、ついね」


「………」


「家賃はいらないよ」


「…そんなの、」


「ここ、俺の持ち物だから気にしないで使って」


「…あなたのお部屋なんですか?」


「そう。俺の部屋でもあるけど、俺は隣の部屋に住んでるから、余ってたし、使ってくれると嬉しいんだけど」


「余ってた…」


「そう」


「いいんですか…?」


「うん。いいよ」


「あ、でも…保証人とか、」


「だから、言っただろ?俺のだって。俺の名義だから君は何もしなくていいの」


「でも…」



まだ、渋る様子をみせる水嶋さんに俺は目を細めた。
< 31 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop