桃橙 【完】
口には出さずとも、ずっと心に引っかかってたのは、あの日見かけた総さんの姿。


ずっと、会いたかった。


会いたくて、会いたくて…しかたなかった。


姿を見てしまったら、それだけで生きていけると思っていた。


なのに…日に日に想いは強くなるばかりで、切なくて仕方なかった。


総さんにまた会いたくて。


抱きしめて欲しくて。


なによりも―…傍にいたい、と願ってしまう。


けれど、それももう叶わない。


安芸は、その度に涙を溢れさせては、ベッドに伏せたまま眠る日々が続いた。
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