静かな涙【完】
『…何もないから…離して…』




浩司の顔なんて見れなくて…




ガタガタと震えたまま、浩司の手を振り切った。





浩司の手がゆっくりと力無く離れていく…





『……じゃあ…』





小さく呟いて、背中を向けたまま歩き出した。





鞄をギュッと抱き締めて、歯を食い縛った。




これ以上、泣きたくなんかないから…




泣かないように…








背後に段々と小さくなって行く、浩司の気配…





あんなに近かったのに…




私達…。
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