静かな涙【完】
コンコンーー


部屋をノックされる。

『真弓、ちょっといいかな。』


お姉ちゃんだ…


『うん。』


ガチャリと入って来る。

お姉ちゃんはリハビリの成果で足は少し引きずっているけれど、
1人でも移動が出来るようにまで回復していた‥



『あのね…真弓、いつまで逃げるの?
浩ちゃんとも親戚になるんだよ?ずっとずっと私達を避けて
生きていくの?会わないつもり?』


お姉ちゃんが問い詰める‥



『…うん‥ごめん…』



だって‥

どんな顔していたらいいのか

私には解らないんだもん‥


作り物の笑顔がいつか壊れそうで

私の心がいつか壊れそうで

そんな状態でどうやってこれから先会っていけばいいのか

解らないんだもん…




『じゃあ、もうここには帰って来ないって事?』

私はコクリと頷く。



『その方が、皆が幸せになれるでしょ?
お姉ちゃんも浩二さんも‥』




『……そう、解った。』

そう言ってお姉ちゃんは部屋から出て行った。





もう…


あの時の様にお姉ちゃんと2人きりで笑い合う事も出来ない…

姉妹という間柄で深く傷ついた跡は消すことは出来ないんだ。


静まり返った扉を見つめた‥


ごめん…


お姉ちゃん…


こんな私を許して欲しい。


心から祝福して上げることの出来ない私を許して欲しい‥




私は再びため息を付きながら荷造りを始めた。

こんなにため息付いたら幸せ逃げちゃうな…なんて思いながら。



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