静かな涙【完】
私はふとタンスの上を見る…



赤色の…



もう被る事のないヘルメットが置いてあった…



私はそれとアルバムを抱え裏庭に向かう…



玄関に貯まっていた新聞と一緒に焼き払おう…



浩司さんとの…



いや…浩司との思い出を…



消してしまわないと前に進めない気がするから…



マッチで新聞紙に火を着ける…



あっと言う間に、アルバムは燃えてしまった…



ヘルメットはやっぱり燃えなくて…



真っ黒に焦げていた…



私の心みたい…




真っ黒で不純物の塊…



私は…




今頃になって…




後悔した…




何故…浩司を譲ってしまったのか…






何故あの時…
お姉ちゃんみたいに、浩司は渡さないと…
泣き叫べなかったのか…


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