静かな涙【完】
『浩ちゃん、あれ乗りたい~』




お姉ちゃんがボートに指差し、浩司さんにねだっている…




「…あ…危ないよ…真紀子さん…」



『いいから…乗りたい』



そんな会話が聞こえてきた…



私は…



一瞬立ち止まる…



―――――――
――――――
半年前…




『……じ…浩司…あれ乗りたいっ』



「えーっ…?じゃあ…二人で競争する?」



『うん!おっしゃー負けねーぞっ』



「ぷっ…真弓…オッサン化してるぞ…」



『えぇっ…ひどい~』


――――――――
―――――




私は赤いボート…
浩司は緑のボート…





『「よーい!ドン!!」』




私と浩司は、勢いよくボートを漕ぐ…



……………
………。




「……真弓…おそぃ…」



浩司との差がみるみると開く…




『ま…待って…タンマっ!これは練習だからっ…』



思ったよりも、水圧があって…
うまく操作出来ない…



「またぁ?もうこれで3回目の練習だぞ?」


そう言って、笑いながら浩司は近づいて来た。


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