椿山亜季人の苦難日記

愛情と友情と(p34-

ピピッ

真剣な顔で、体温計をみつめる貴男。

「…熱はないな…。」

「だから違うって言ったじゃん!」


まだ、主すら来ていない保健室で、貴男の勢いにのせられるがまま、熱まで計らされた。



ばつの悪そうなかおで、私の前に座った。

不貞腐れたいのはこっちの方だ。

廊下に残していったケーキだとか、こんなにあせる貴男だとか、感情を込めて考えると、なんかすごいやるせなくなる。


「しょうがないだろ、千歌が変なことばっかりするから…。」


変なこと…?


「何それ…ただちょっと女の子らしくしてみただけじゃん!」


「それが違うんだって!!千歌は、いつもそうだったじゃん!『かわいい』って言えば怒るし、ホントに苦しくたって泣かないし…!」


「口より先に手が出るし?」


「そうそう!殺しても死なない、いちおうは女!」


…あぁ、やっぱり。


「それなら、なんでそんなに心配するんだよ…私が丈夫なの知ってるんじゃん。」



「だって、千歌は大事な大事な、親友だし!」


ニカッと、

笑う。


「こんな女、なかなかいねぇもん!


まっ、女にここまでの強さも面白さも求めねぇけどさ!」




やっぱり、そう。


"女"ではなくて、


"親友"。


そこに性別などはなく、


それ以上でも、

以下でもない。




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