サクラが咲いた、雨





そう。
気付けば、彼にそんな事を聞いていた。

今日は、始まったばかりなのに。


もし、『いる』と言われたなら。
私はどうするのだろう。

私だという可能性は、あまりない。


無きにしも非【あら】ず、といったところ。




「何、どうしたの。いきなり…」

「もしかして、…梓紗のことが好きなのかなあって。そう思ったから」





何を、聞いているのだろう。
こんなことを聞いて、何になるというの?

私は、一体何をしようとしているの。





「…まだ、秘密だよ」

「…っ」




…秘密。
ということは、きっと、そうだ。

彼は、――――梓紗のことが好き。





「…そっか。じゃあ、また教えてね?」

「はは、どうしよっかな」

「もー!」





辛い。
辛いよ。






ねえ、加地くん。
あなたはもう、忘れてしまったの?







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