送り狼

この道を通るのは何年ぶりだろう?



私は8月の太陽が照りつける田舎道を歩いている。

最後にここに来たのは、小学校4年生の時だった。

小さな子供だった私も、もう高校2年生だ。


子供の頃、あんなに楽しみにしていた、川遊びも、畑の手伝いも、蝉捕りも、

私の成長と共に、すっかり記憶の片隅においやられしまっていたらしい。





初夏を迎える頃、おばあちゃんが亡くなった。




亡くなった事を聞かされるまで、

私は、あんなに大好きだったおばあちゃんの事をすっかり忘れていた。

そんな私が何故数年ぶりにこちらへ足を向けているのかというと、

忙しい両親に変わって、夏休みを利用し遺品を整理するよう言いつけられたからだ。


もちろん、最初は、


「何で私が!」


と反抗したが、


「後でママ達も行くから。先抜隊という事で、ね??お願い!!」

と、押し切られ、最後は私が諦めるといった格好で渋々了承した。



おばあちゃんの家は、本当に山奥で、最後のバス停から歩いて30分程かかる。


子供の頃よく遊んだ懐かしい景色が、年頃になった私を暖かく迎えてくれる。


綺麗な小川も、視界一杯に広がる緑もあの頃のままだ。

おばあちゃんと過ごした夏休みの記憶が少しづつ鮮やかに蘇ってくる。



私は、ふいに懐かしいような 、せつないような、なんとも言えない気持ちに襲われ、

思わず立ち止まる。


小川にかかるこの橋を渡ると、もうすぐおばあちゃんの家だ。


そして……


確か、この小川のほとりには…



おばあちゃんがよく話してくれた、お伽話の主人公

犬神様の社がある。



「………」




妙に懐かしい気持ちにかられた私は、犬神様の社へ立ち寄って行く事にした。







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