送り狼

「ガラガラっ!」


「うっひゃ~っ!!ホコリっぽいっ!!」


数ヶ月、閉ざされていたおばあちゃんの家は、少しホコリっぽかった。

取り敢えず、ここには先抜隊として一人で一週間ほど滞在する予定だ。

多少は生活できるようにしなくちゃならない。




家中の窓を開けて回る。





ーーおばあちゃんの部屋だ。




窓を開けると、一気に日差しが差し込み部屋の中が照らし出された。

私は、明るくなった部屋をゆっくりと見回す。

あの頃となんら変わらない。

変わった事と言えば、ここにおばあちゃんは、もう居ない、という事だけだ。



ーー何でだろう…。



おばあちゃんの事なんて、ここ数年、思い出す事なんて全くなかった。


なのに、ここに来てから、いろんな事を思い出しては、少しせつなくなる。



ボンヤリと化粧台の鏡に映る自分を見る。


髪の毛が少し乱れている。



ーーなんだか、なあ…。




何気なく視線を落とすと化粧台には写真たてが飾られていた。


『…こんなのあったっけ??』



記憶にない写真立てを手に取りマジマジと見つめてみる。

白黒の古い写真に写っているのは、見覚えのある景色。

お祭りだろうか、沢山の人で賑わっているけれど、ここは犬神様の社だ。

先程見た光景とは違い、雑草も苔も生えてなく、綺麗に手入れされている。



その中心に写る二人の人物。




『あれ???これって??』



毎日見ている顔だ。

慌てて鏡を覗き込む。



『…あたし…??』



古い写真で細かい所までよく見えないが、

そこには浴衣を着て楽しそうに笑う私がいるようだ。



「真央はおばあちゃん似ね。おばあちゃんの若い時に良く似てるわ」



そういえば、母がよくそう言っていた。

ああ…、ここに写っているのはおばあちゃんなんだ…。

その隣に写っているのは、同じく浴衣姿の男性。

お祭りで購入したのか狐の面で顔を隠していて、その顔を確認する事は出来ない。




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