送り狼

楽しそうに笑っているおばあちゃんとは対象的に、

腕組みをして、そっぽを向いたように写っているその男性は、

腰まである長い髪を緩く後ろで縛っている。

そして、その長い髪が似合うくらいに背が高く、手足も長い。

醸し出す雰囲気はモデル級だ。



「おばあちゃん、やるう~!」



この人がおばあちゃんの旦那様なのかな??



私達家族はおじいちゃんを知らない。

母が物心ついた頃には、すでに居なかったらしい。

若くして交通事故で亡くなったそうだ。



昔はここに無かった写真…


おばあちゃんは、亡くなる前この写真を写真立てに飾り

どんな気持ちで眺めていたのだろう…。


都会のせわしない暮らしは、いつの間にか家族の絆とか、人との繋がりとか、

そんな大切な何かを忘れて行ってしまうものなのだろうか?

私は、その事実に戸惑いを隠せない…。


実際、私達家族はもう何年もここに訪れていない……

おばあちゃんが亡くなるまでの数年間、どういう暮らしをして、何を思っていたのかなんて

知る人はいない。

居なくなってしまった今となっては、知るすべもない……。



『そんなものなのかな…』




私は、写真立てをそっと元の化粧台へ戻した。





< 5 / 164 >

この作品をシェア

pagetop