どこからどこまで
夜遅くまで残っていっしょに課題に取り組んでいた同級生たちは、日付が変わったときを境にひとり、またひとりと減っていった。
みんな、仕事がはやいなあ…。
午前2時をまわった頃には、さこねぇとあたししかいない状態になってしまっていた。
「にしても、よく許してもらえたじゃん」
この状況を心待ちにしていたかのようにさこねぇの手が止まる。大きく伸びをしながらニヤッと笑った。
最初は何を言われているのかわからなかったが、少し考えて理解する。
あぁ、翔ちゃんのことか。
「止められはしなかったよ?心配はしてくれてるみたいだけど…たぶん」
「そりゃあ、そうだろうよ」
「床で寝るって言ったらびっくりしてたなあ。ちゃんと寝袋あるからだいじょぶって言ったんだけど」
「あぁ…うん、びっくりするだろうよ…」
「うっわ、すっごいくるってる!」
「…聞いてないし」
なんでこんなにデッサンがくるうんだろう…。
さこねぇと話している間に画面から離れて見てみたら、この有り様だ。全然かたちがとれていない。明暗の差もバラバラ。あの影はコントラストが強すぎる。
「あー…もう………」
「まあほら、休も」
「うん……」
差し出されたチョコレートにお礼を言いながら手をのばす。普段は甘すぎると感じていたはずのものが程よく感じるということは、それなりに疲れているんだろう。
「…こないだ、さこねぇに言われたこと、考えてみたんだけど、」
「言い過ぎて本当に申し訳なかった」
「え?いや、ほんとに全然だいじょぶだから!寧ろ発見だったていうか、"過保護"って言ってたの、なんかわかった気がするっていうか…」
「あ、自覚したんだ」
「うん…」
翔ちゃんは優しい。思えば喧嘩はおろか怒られたことすらないかもしれない。元々気長な性格で、あたしに対してであるとかそういうこと以前に怒ること自体がめったになかった。
翔ちゃんが、というよりは、あたしが優しい翔ちゃんに甘えすぎていたのかもしれない。