どこからどこまで
「すきなのかなあ…」

「え?」

「すきだとしたら、"あり"なのかな?」


 "すき"にも種類があることくらい、疎いあたしにだってわかる。家族への"すき"とか、友だちへの"すき"とか、何か気に入った物への"すき"とか、恋愛対象への"すき"とか。

 翔ちゃんへの"すき"は、どれにあてはまるんだろう。


「さな?」

「ん?大丈夫だよ?やっぱりアレだねー、低気圧だね。身体も気分もちょっとダルくなるっていうか、」
「ごめんね」

「えっ?」

 翔ちゃんからラインに返事が返ってきていた。

『了解。夕飯なにがいい?』

 今度はさこねぇにのぞかれることはなかった。謝られたことに驚いてケータイを閉じる。


「沙苗、ごめん。さんざん変って言っといてアレなんだけど、話、なんでも聴くからさ。ため込まずにちゃんと話してね?」


 あぁ、なんだ。そんなことか。


「うん!ありがとー、さこねぇ」


 さこねぇは申し訳なさそうに笑って次の授業の教科書をだし始めた。

 大丈夫だよ。だってあたし、悩まないたちだし。考えたくないことは考えないように、上手いこと自分の気持ちを整理できている、つもり。うん、たぶん。

 教授が教室に入ってくると少しずつ伝染するように静かになっていく。

 そういえば、予鈴も本鈴もなくて違和感を感じる空間にも、いつの間にか慣れてたなあ。
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