恋愛ターミナル


二次会は披露宴よりも人数が減って、おしゃれで小さなお店を貸し切っての宴会だった。

さっきよりも近い主役の二人に、ひとりで複雑な想いを馳せる。


「あ。みんな! 今日は忙しいのに来てくれてありがとね」


いずみは私たちを見つけると、裕貴さんの腕から手を離し、駆け寄って来た。


「いずみぃ。おめでとうっ」
「ま、いずみならしっかり者だからちゃんと“主婦”出来るんじゃない」


凛々と梓がそろって祝福の言葉を掛ける。
それに笑顔で応えたいずみが、私と目が合うなり口を尖らせる。


「亜美に友人代表やって欲しかったのになぁー」


その依頼は本当だったけど、もう断ったし、今は冗談で文句を言ってるってわかってる。

だって、絶対に無理。
元々緊張しいだし、文才もないし。

それに、あの席でも二人をどんな顔して見ればいいかわからなかった。

それを、高砂の真横で、しかも笑顔で祝辞を読むなんて。
想像しただけで逃げ出したくなって……。


「あ。うそ。冗談よ? そりゃ残念だったけど、こうして参加してくれただけで嬉しいし」


私の顔色を気にしたいずみが慌ててフォローする。


――私、まだ未練があるんだろうか。

それでも言わなきゃ。
今日この日が人生の門出である親友のいずみに、笑顔で「おめでとう」って。


「……あ、いずみ……おめで」
「おお! 亜美ちゃん! 今日は来てくれてサンキュ」


私の言葉を遮って、いずみの後ろから裕貴さんが大きく手を振って来た。
スーツの胸ポケットに差さった花は、いずみの髪に添えられた花とおそろい。

賑わう店内の声が遠くに聞こえて、普段よりも飲んだお酒でぼんやりとした頭で想像する。

――――もし、あの時。私に告白する勇気があったら、今、隣(そこ)にいるのは私だったりしたのかな。
おそろいの紅い花と、ペアのマリッジリングを薬指にはめて。
裕貴さんと私が幸せそうに視線を交錯する、そんな未来に変わってた……?




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