ちっこいラブやもしれんけど。(12/22完全完結☆)
2アウト、ランナー2塁3塁。
疲れているのは……相手ピッチャーも同じだった。
デッドボールに、四球。
なんちゅー出来上がった舞台……。
次の打席は、由良。
こうなりゃ皆も黙ってはおれず、下剋上の後の怖さもものともせずに……
応援に、力が入る。
由良は、レフトの頭上にバットの先を向けて…
……構える。
第1球。
真芯で捕らえた…ボール。
「あかーん、ソフトは球が重いわ!!」
塁に向かって走る由良の嘆きに、一同ガクっと来たけれど。
そこにドラマがあることを……
誰しもが、願っている。
「…………落とせ~!!!!」
スポーツマンシップに反した応援は、
「………香澄ちゃん…。」
香澄ちゃんの……声。
「正攻法でいくばかりじゃあ、大事なもんを逃すんだから。」
私の方を見て…、ニカッと笑った。
ぽとり。
レフトを守備する女子は…
自己防衛なのか、グローブで頭を隠して、その手前に…
ボールが落ちる。
「………あはは、ソレ見ろ~、走れ~!!!」
香澄ちゃんが…可愛い顔を小悪魔みたいにして、豪快に…笑う。
「凄いわ、香澄ちゃん。」
やるな、流石は元カノやん。
……負けてられんなあ…、私も。
「由良あ、突っ走れ~ッツ!!!」
レフトがもさくさしている間に、ランナー二人が…ホームに帰還する。
由良は3塁のベースに辿りつき、ちらりと…私の方を見る。
もっともっと、歯あ食いしばって走ってよ、由良。
「帰ってこーーいっ!!」
「「「…えっ……。」」」
周囲が驚きの声を上げるのも……無理はない。
レフトのカバーに入ったセンターが。
有り得ない勢いで…
挿しに来たから。
「あのセンター、ボール投げの県記録保持者やで?」
「え。」
岡田くんの冷静な一言に…
みんな一斉に…息を飲む。
由良が、ホームへと手を伸ばして…飛び込んで
来るのと。
キャッチャーがボールをキャッチしてそれを制するのと。
ほぼ…同時だった。
もくもくと砂煙が上がって。
審判が……目を見張って。
「………アウト~!!」
拳を高く突き上げる瞬間を。
腹這いになったままの由良は……どう見ていたのだろう。
伸ばした指先と、ベースまで…。ほんの数センチの距離…届かなかった。
彼は、顔をグラウンドに伏せたまま。
しばらく…動かなかった。