アイノカタチ
未分類。
つまりは未だに手を付けていない書類と確認はしたがその日に必要な書類なのか否かを、分かりやすくボックスに分けてまとめて置いてくれている。
おかげでサクサクやりやすいのなんのって。
電話の受け答えも初めてとは思えないような堂々たるものだったし。
たった3日しかいないがこの子は『出来る子』なんだと確信している。
しかし。
「そう言えば、ここに来る前は、
この子面接落ちまくりだったんだって?」
「そうみたいだな?
本人はそう言ってたぞ?」
亮斗は、空になったグラスに酒を継足しながら言う。
「調理師の免許を持ってて、かなりの腕前とセンス持ってるんだから、レストランとか、色々働き口はあっただろうに。
どこ受けて落ちまくりしてたんだろこの子」
俺は、腕を組みつつそんなことをぼやく。
亮斗は、そんな俺の疑問には応えず、ただゆっくりと酒を煽っていた。
「訳あり。なんだと思うよ」
ずっと静かに聞いてた武惟が、ゆっくり口を開く。
「今話さないってことは、必要ないからかもしれないし。
そこの部分ではまだ信頼してる訳でもないからかもしれないし。
まぁ、まだ出会って3日しか経ってないからね、僕たち。
どちらにしても、プラスな人材には変わりない。深入りしないで、彼女が話したくなったら聞けばいいと思うよ」
武惟は、それだけ言うと、トイレ、と言ってその場を離れた。
「武惟の言う事も一理あるかもね。
話してくれるかはわからないけど、せっかく手に入れた人材をやすやすやめさせる訳にはいかないもんね?」
バンバン、と亮斗の背中を叩きながら言う。
「痛てぇって」
亮斗は、背中を丸めながら小さく反抗する。
まだまだ彼女との関わりは始まったばかり。
そのうち、いろんな事を話せるまでの仲にはなりたいよね?亮斗。
俺達は意外とシャイな社長様の、絶対的な味方だから、頑張れ親友!
あはは、と笑いながら、更に背中を叩く。
亮斗は、いい加減にしろ!と、俺の背中を叩き返す。
痛いから、やり返し。
なんてやってたら、叩きあいになって。
トイレから戻ってきた武惟が来るまで、派手に叩きあい、ならぬ殴り合い?(笑)
をするハメになった。
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