アイノカタチ
「上着なんか被せなくていいだろ。
まったく、女のくせに男に囲まれた中に無防備に寝くされるとは。なんつーやつだ」
そう言うと、グラスの中に入ってる残りの酒を一気に煽る。
「………確かにね~。
まぁ、それだけ『仲間』として信頼してくれてるって事はあるんだろうけど。
『男』としては複雑だね」
つまりは、『男』として俺らは認識されてないわけだし。
一応は俺も自分の外見には自信あるから、余計複雑?(笑)
黄色い声上げられるのはうざいけど。
かと言って女友達並に普通にされるのも、歳食って魅力落ちた?と錯覚しそうになる。
「それを言うなら、この娘は会社に来た当初から変わった子だったでしょう?
敬語は使うけど、亮斗とはめっちゃ喧嘩腰だし。社長って絶対心ん中じゃ思ってないよね?しかも、僕たちにも、いつもご苦労様です、とお菓子の飴ちゃん2、3個くれるし」
それを言われ、あ~、と思う。
本当に、俺らは彼女にとって気の合う仲間同士って感じになってる。
まぁ、嫌な感じには思わないし、彼女ならいいか、とさえ思う。不思議なものだね。
どうせ、出来るわけないと思っていた亮斗の食事係。
ちょうど亮斗といざこざ起こして、専属が居なくなった時期だった。
今後の後任をどうするか、と悩んでいた時、腕を負傷した亮斗が、たまたま通りすがった女性がいやに面白いから、謝礼金を払う口実で雇ったと聞かされた。
またこいつは、と流石に呆れた。
しかも、食事係に専属させる。と聞いた時は気は確かか?と疑った。
一般人が亮斗の口に合う料理を作れるはずはない。まぁ、あんまりひどい時は辞めて貰えばいいや、とこいつの好きにさせる事にした。
あいつはうるさく言うと、頑なになる癖があるからな。
しかし、意外にも彼女はフルコースを作り上げた。味も申し分なく上手かった。
あの時は詳しく聞けずじまいだったが、調理師の免許を持っていたらしく。
俺も亮斗も驚きを隠せなかった。
それに、この3日で感じたことは他にもある。
書類の仕分けもきっちりしていると言う事。





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