卑怯な私
清麗
「優子ちゃ~ん。こっちきんしゃい」
数メートル離れているおばあちゃんが自分家の前で豪快に手を振っている。
「どうしたの、茂(しげ)バア」
海の香りがここまで漂ってくる。
「さっき玉ねぎ収穫したんよ。持って行きんしゃい」
「ありがと~!これで何作ろう」
白いスーパー袋の中身を見て嬉しさが増す。
「おぉ、良い所にいるじゃないか。ちょっと待ってな」
茂バアの向かいに住んでいる住谷(すみや)さんが声をかけてきた。
「じゃがいも、人参あるから持ってけ持ってけ」
「ありがと~!」
スーパーの袋を受け取ると、笑顔を向ける。
「これで肉じゃがでも作るね。出来たら持って来る!」
茂バアも住谷さんも最愛の人を失って独り暮らし。