三種の神器‐戸嘴美園(こはし みその)の場合
「うん。実は俺の本当の父親は俺が9歳の時に急性白血病で死んだんだけどさ、その時母親に遺言を残したらしいんだ。『僕は楓駕(ふうが)が大人になって結婚する女性を見届ける事が出来ない。だからなるべくなら楓駕が変な女でつまづくような人生を送る事だけは避けて、どうかしっかりとした女性と交際して真っ当な人生を歩めるように育ててくれ』ってな事をね。そう病床でベッドに臥(ふ)せっていた自分の夫からそう言われた母親は、とにかく律儀にその遺言通りに俺を育てようとしてきたみたいだな。って、まあ俺が中学生の時には母親はすでに再婚してたから、育ての父親が死ぬ直前までは二人三脚で俺の事を気にかけてくれたらしい」
  と楓駕は更に詳しく説明をした。




「ふーん。そうなんだ。って言うか楓駕って意外にも過保護に育てられてきた感じだね?」
  と美園は言った。





「うん。まあ俺の母親に父親はぞっこんだったから、新婚当初から父親は苦労も苦労と思わずにこれたみたいだね。だって9歳までの父親と母親はめっちゃ仲が良くて喧嘩らしい喧嘩をしてるトコなんて全く見た記憶はないからね。って言うか、父親にしてみたら一回りも年下の母親が一生懸命に子育てしたり、食事作りをしているのを見てるだけで微笑ましかったんだろうね」
  と楓駕が自分の母親のルーツと言うか学生時代の事を詳しく話してくれた内容は、美園の想像を遥かに超えていた。




「ん?!楓駕って母親が16歳の時の子供な訳?って言ったら、ちなみに楓駕のお母さんは今現在何歳なの?って楓駕が今二十歳だから+16すると、えっえーっ!!!って事は、さ・36歳なのおー!。ってわ・若過ぎるー!!!言うなればもう一花咲かせてしまえそうな年齢じゃないの」
  と美園の驚きは半端なかった。
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