ターニングポイント
短編
  相沢岳大(あいざわ たけひろ)は娘の陽毬(ひまり)が5歳の時に病気で妻の雪乃(ゆきの)を亡くした。そのため岳大は必然的に慣れない子育てと家事と仕事の狭間でもって、心に余裕を持てないままの生活を余儀なくされた。



  
  やがて厄介な事に陽毬は思春期を迎えたあたりから、徐々に岳大に対して反抗的な態度を取るようになってきた。たとえば陽毬のスカート丈の短かさを見咎(みとが)めた岳大が『陽毬!なんだ。その短いスカート丈は。今すぐ元の長さに戻しなさい!』とそうやや強い口調でたしなめると、陽毬はたちまち不機嫌になった。が、しかし皮肉な事にこの時期の岳大は昇進試験の勉強で多忙だったため、娘のビミョーな心の変化に気づけなかった。




「あーウザイ!なんでああも家の父親はいちいち私のする事なす事に対してことごとくクレームをつけてくるんだろう?もおーイヤんなっちゃう!」
  と陽毬はさもイヤそうな顔で親友の芽衣(めい)にボヤいた。




「陽毬ィ~ちなみにあたしの親もマジうるさいよ。それにさ紅緒(べにお)んトコの親もそうだって言ってた。だからそれって多分普通なんじゃないのぉ~?まあもっとも陽毬は少し気にし過ぎな面があるからねー……」
  とやや気だるそうに芽衣が言った。
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