ケータイ小説を書くにあたって


「そ、そんなことないよ。ターザンだったから森の中でヒロインに出会えたわけだし、ヤンキーはなんかこう…、そう、キーワードに設定すれば、検索に引っかかる確率が上がる!」

「せこ。そんなせこいこと考えてやってる奴の小説とか誰も読みたくねーし。」

「…………。」


ああもういい加減顔を上げてくれないかな。

どんな表情で言ってるのか確かめるのも怖いけど、それよりも表情が見えずに言葉だけ突き刺さってくる方がなかなかダメージが大きい。


「もう分かったよ。じゃあもうやめる!ケータイ小説なんか書かない!」

「え!」

私の思いきった発言に、友人Aはようやく顔を上げてくれた。


「いや、書きなよ。」

「私には無理なんでしょっ!」


そう言って、拗ねたように、フンッとそっぽを向けば、友人Aはさっきとは正反対の、柔らかい口調で、言葉を紡いだ。


「俺様とか、ヤンキーとか、宇宙人とか、そんなに背伸びして書く必要ないんじゃない?自分らしく、書きたいものを素直に書けばいいと思うよ?」


なんだそれ。

そんなの分かってる。

分かってるけど。


「私が書きたいものは、どうせつまんないじゃん。」




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