飛ばない蝶は、花束の中に



「お腹、すかない?」


雅ちゃん帰って来ないなんて思わなかったから俺、昼ご飯食べ損ねた、と。

ぎこちない流れだとは思ったけれど、“タカノ”の浮かべた笑顔に不覚にも安堵した。



きっと“タカノ”は、ちくりちくりと。
もしくは激しく、私に怒りをぶつけて。

きっと、大喧嘩になると、思っていたから。




「雅ちゃんたち、ケーキ食べたんだっけ?」



“タカノ”が雅に張り付いているイメージだったのに、今、私の目の前には。

嘘を吐いて出掛けた罪悪感でもあるのか、それとも出掛けた事が相当にキツかったのか、“タカノ”の指を握ったままの雅がいて。


食事どころか、お兄ちゃんが帰るまで部屋に閉じこもっているつもりだったくせに。




「雑穀米のお茶漬け、食べたいな」


なんて。
難しい注文を、出した。




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