飛ばない蝶は、花束の中に


……おかしい、な。


私は、どれだけイチャイチャしているように見える2人でも、雅の好きなのはお兄ちゃんだと思ってた。

それが間違っているとは思えないんだけど…。


体の繋がり、って。

心が通ってなくても、ある種の情が生まれるものなの?

あんなクタクタになるまでされるのに、そんな。


あたかも、大好き、みたいに?





「深雪ちゃん?」

「行くよ?」



死にそうな顔でようやく帰って来たくせに、雑穀米のお茶漬けとやらが美味しい店に行くとかで。

不安な様子を浮かべない雅の目は、明らかに。


“鷹野さんがいれば大丈夫”


と。
ふわりと甘い色で。




馬鹿馬鹿しいというか。
痛々しい、というか。


これが世に言う、洗脳ってやつなのかと。

私は、しぶしぶ立ち上がった。




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