飛ばない蝶は、花束の中に


時々ちらりと、お兄ちゃんの姿を求める。

あまり離れたくなかったから、比較的海岸に近いところで揺られていたけれど、こう人が多いと、海というよりプールのようでもあり。


浅い箇所は、水もぬるくて。

テレビで見た、温泉に浸かるニホンザルを思わせた。


ひとりは、つまらない。

やっぱりお兄ちゃんの傍に戻ろう、と。
そう思って体の向きを変えた、その目の前に、見たことのない男が、私の浮き輪に手を掛けていた。




「どうしてひとりなの?」

「……………」



だれ?
ナンパ?



「あれ?外人だった?日本語わかんねぇ?」


「……ひとりじゃないから」

「なんだ、日本語わかるんじゃん。ひとりじゃないとか嘘ばっかり」


ずっと、ひとりだったじゃん、と。

痛んだ茶色い髪を濡らした、その男は。

一緒に遊ぼうよ、と、私の浮き輪を引っ張った。




< 78 / 328 >

この作品をシェア

pagetop