君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「同じ高校だったんですか?」
「覚えがない」
そんなことがあるだろうか。
あれだけ執着してるんだから、なにか関係があったんだろうに。
「こっぴどく振ったとか」
「記憶にない」
政治家みたいになってきた。
「告白されたことは?」
「そんなの、いちいち覚えてない」
不覚にも、呼吸が止まったかと思った。
いちいち覚えてない。
それは…今の私には、きつすぎるよ、新庄さん。
しまった、次の言葉が出てこない。
自分で話を振ったくせに、完全に無防備だった。
新庄さんも、私が突然黙った理由に思いあたったんだろう。
悪い、とつぶやいたけれど、それでさらに墓穴を掘ったことに、すぐ気づいたようだった。
だってそこで謝ったら、せっかく「流した」のが水の泡だ。
なにか言わなきゃと思うけれど、いい言葉を思いつく前に新庄さんがギヤを入れ、再び車を走らせはじめた。