君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
本間さんやおなじみの宣伝部の方々に差し入れをして、相手の代理店の営業さんにも挨拶をして、二時間ほどかけて会場を見尽くして、課長に一報を入れると任務が完了した。



「お客様密着型、ですね。うちの弱点」

「俺もそう思う」



日が西に傾いてきた中、来た道を戻る。



「うちはよくも悪くも、スマートにやろうとしすぎる」

「本間さんのところも、それをわかっていて使い分けている気がしますね」

「こういうイベントは苦手だと思われてるんだろうな。実際、そうだが」



運営にはどうしても企業のカラーが出る。

うちは大手な分、森を整えることに気を取られて木を見ない傾向があるのは否めなかった。


宿題だな、と新庄さんがつぶやいた。



「そっちじゃない、こっちだ」



駅への道を入ろうとすると、なぜか止められた。



「駅、こっちですよね?」

「この後、暇だろ?」



聞かれるまま、はあ、と応えると、新庄さんがにやりと笑う。



「こんな場所に来ておいて、ただ帰るって手はないだろう」





「すごい!」


感嘆の声が漏れる。

日本一高い、を売りにしている展望フロアからは、日の暮れていくベイエリアを一望できた。



「初めて来ました、ここ」

「ちょっと感動するよな」

「はい」



ちょっとどころではない。

どうして人間に、こんな高いところでお茶を飲む権利があるんだろうと不思議になる。


誰かと来たこと、あるんだな、新庄さんは。

まさかこんなところに家族で来ないだろうから、十中八九、彼女だろう。

鬼のくせにこんな直球なデートコースを押さえているなんて、どういうことだ。

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