君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)

「なんだ」



無遠慮に眺めていたら、見咎められた。



「なにかスポーツやってました?」

「中高は、サッカー部だった」



意外にメジャーどころなので驚くと、Jリーグ黎明期世代だからなあと笑う。

私服だと心なしか雰囲気がやわらかい。

時間を気にする必要がないせいか、歩き方もソフトで、ゆっくりだ。


平日の昼間。デートスポットだけあって、周りは学生らしきカップルだらけだ。

大学生って時間あったもんなあ、としみじみする。

卒業して四年もたっていないのに、ずいぶんと歳をとった気になる。



「ちゃんと休めてるのか?」

「はい。あれから変なことも起こってません」



そうか、と新庄さんがうなずく。



「引っぱり出して、悪かったな」

「勉強したいですから」

「よく見とくといい。イベントは今、あそことうちが半々で扱わせてもらってる状態だから」



あそことはライバル代理店のことだ。

新商品のPRや全国規模の展示会などはうちがほぼ扱うけれど、こういう中規模以下のイベントは、たしかに半々なのが現状だった。

どうしてうちのシェアが伸びないのか、ヒントがあるかもしれない。

そういう意図で誘ってくれたんだろう。



「新庄さんも、お休みなのに」

「課長の無茶振りは、いつものことだ」



広告業にはすばらしい勘とセンスを発揮するけれど、マネージャーとしてはちゃらんぽらんな課長。

その分まで、下にいる新庄さんや製品チームのチーフがびしっと締めている。



「ふたりとも出社扱いにしていいからって言われたんだぜ、なんのための代休だよ」



いかにも言いそうで、笑ってしまう。


普通に話せるもんだな。

どんな顔で会えばいいのかと悩んだけど、それどころかこうして話していると、落ち着いてくる。

いつの間にか、一緒に行動することに、ずいぶん慣れていたんだと実感した。

< 77 / 126 >

この作品をシェア

pagetop