君しかいらない~クールな上司の独占欲(上)
「なんだ」
無遠慮に眺めていたら、見咎められた。
「なにかスポーツやってました?」
「中高は、サッカー部だった」
意外にメジャーどころなので驚くと、Jリーグ黎明期世代だからなあと笑う。
私服だと心なしか雰囲気がやわらかい。
時間を気にする必要がないせいか、歩き方もソフトで、ゆっくりだ。
平日の昼間。デートスポットだけあって、周りは学生らしきカップルだらけだ。
大学生って時間あったもんなあ、としみじみする。
卒業して四年もたっていないのに、ずいぶんと歳をとった気になる。
「ちゃんと休めてるのか?」
「はい。あれから変なことも起こってません」
そうか、と新庄さんがうなずく。
「引っぱり出して、悪かったな」
「勉強したいですから」
「よく見とくといい。イベントは今、あそことうちが半々で扱わせてもらってる状態だから」
あそことはライバル代理店のことだ。
新商品のPRや全国規模の展示会などはうちがほぼ扱うけれど、こういう中規模以下のイベントは、たしかに半々なのが現状だった。
どうしてうちのシェアが伸びないのか、ヒントがあるかもしれない。
そういう意図で誘ってくれたんだろう。
「新庄さんも、お休みなのに」
「課長の無茶振りは、いつものことだ」
広告業にはすばらしい勘とセンスを発揮するけれど、マネージャーとしてはちゃらんぽらんな課長。
その分まで、下にいる新庄さんや製品チームのチーフがびしっと締めている。
「ふたりとも出社扱いにしていいからって言われたんだぜ、なんのための代休だよ」
いかにも言いそうで、笑ってしまう。
普通に話せるもんだな。
どんな顔で会えばいいのかと悩んだけど、それどころかこうして話していると、落ち着いてくる。
いつの間にか、一緒に行動することに、ずいぶん慣れていたんだと実感した。