カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―
その子は照れたように私に挨拶をすると、要のシャツをツンツンと引っ張って小声でそう言った。
私とまた目が合うと、ニコッと笑う。
そのときも、その子の手は要の腕に触れたまま。
「いえ。大丈夫です。夜分にすみませんでした」
なんでこんなにもうまくいかないの?
もしかして、この想いは止めた方がいいっていうこと?
正直、もう簡単に諦められるほどの気持ちじゃないのはわかってる。
だけど、「カナ」と呼ぶ彼女から奪おうとするほどのパワーがない。
外に出たときに、ものすごい速さで階段を下る足音が聞こえた。
「待って……!」
呼び止められる声と同時に手を掴まれると、その箇所だけに神経が通ってるんじゃないかと思うほど熱く感じる。
「さっき、なんて言おうとしたの……?」
真剣な目で問う要を見て、オフィスでの要の言葉を思い出す。
「……ほんと、そうね。相手の理想と自分とは、違うのかもしれないわ」
“かも”じゃないんだろうけど……。
それは森尾さんが言っていた通りの、絵に描いたような女性がここにいたってことが証明してるし。
「理想を手に入れる“KANAME”は理解できないことでしょうけどね」
凡人の、小さな嫉妬や、もがき苦しむ気持ちなんて。