カラフルデイズ―彼の指先に触れられて―

「あ、3月20日予定、ね」


手帳を広げて発売日を確認して言った。
手帳を閉じる前に、ペンホルダーに差さっているボールペンをそっと撫でる。

パールホワイトの軸に、銀色のクリップ。
そのクリップの先に、気付くか気付かないかくらい、小さくワンポイントの雪の結晶。

華奢なラインのそのボールペンが、今の私の、特別なペン。


「そんな顔されたら、抱きしめたくなるんだけど」
「!!」


囁くように耳打ちされた私は、思わず手帳を手から滑らせる。それを、要が横から長い手を伸ばして、上手いことキャッチした。

私は赤くなる耳を覆うようにして要を睨む。


「ふ、不意打ちはやめてっていつも……って、ちょっと……!」
「なに?」


「なに?」って、充分理由はわかるでしょうが!


手帳から解放された私の片手を、鮮やかに奪ってするりと指を絡ませる。


「いいからいいから」
「こんな人目に付く中でよくないのよ! 私は!」
「あ、見て。虹」


――いつもそう。
要のペースに掻き乱されて、翻弄される私。


そのおかげで、相変わらず景色が明るく見えすぎて困る。
……『困る』だなんて、ただの惚気ね。


「……虹も、要といたら七色以上に見えちゃう」


どこかで誰かが言ってた。
恋すると、いつもと同じ景色(毎日)が輝いて見えるって。


もっと、ずっと。

一日、一分、一秒ごとに。
繋いだ手から、広がる世界を、あなたと一緒に。







*おわり*


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