恋する季節 *- confession of love -*


大和の傷ついたような表情に、掠れた声に、美琴の胸が痛む。
こんな顔をさせたくないから勇気を出すって決めたのに……と情けなさと脱力感が同時に美琴に重くのしかかる。

結局自分は浅海を傷つけたくないから言うとおりにして、大和をないがしろにしてしまったのだと今更気づく。
大和の優しさを知っているからこそ、それに甘えていたんだと。

だけど大和にだって心がある。
いくら事情があったにしろ、後で取り戻すつもりだったにしろ、あんな事を言われれば傷つくに決まっているのに……。
大和が笑顔で頷いてくれたから気づけなかった。

大和の優しさに甘え続けていた自分に今更気づいて、ハっとしたけれど……もう遅かった。

もう、傷つけてしまったのだから。

「大和……」

どうしたらいいのか分からない。

いつもだったらそんな時俯いて黙ってしまう美琴だったが……。
大和のつらそうに歪んだ顔をこれ以上そのままにさせときたくない一心で、気付いたら大和の顔に手を伸ばしていた。
勇気だとかそんなの意識せず、自然と。

美琴の手が大和の頬に触れると、大和の少し驚いた瞳が美琴を見た。


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