恋する季節 *- confession of love -*


「えっ、なにって……だから、その……」

思い浮かぶすべての単語が美琴の前で口にしてはいけない気がして、答えに迷う。
それでも不安そうにじっと見つめてくる美琴の視線に耐えきれなくなって、「キス、とか……」と漏らすと……大和の想像通り美琴は黙ってしまった。

きっとショックが大きかったんだ。そうしたいと思っているのは山々だが美琴が嫌がるなら絶対しないからと大和が撤回しようしたのだが。
美琴が「なんだ、そんな事……」と安心した顔で漏らす方が先だった。

……そんな事?
ショックを受けさせたかもしれない、汚らわしいと思われたかもしれない。そんな風に心配していた大和だったが、美琴の言葉に頭の中が一瞬にして真っ白になる。

それから、大きなショックがコンクリート並みの固さの波となって押し寄せる。

男嫌いな美琴。だから当然のように付き合った経験はないものだと思っていた大和。
そんな美琴から、なんだキス程度か、という趣旨の発言が飛び出した事がショックで仕方なかった。

もしかしてもう誰かと……?
そんな心配と不安、答えを聞く前から燃え始めている嫉妬心に襲われながら、大和が「そんな事……?」と聞き返すと、美琴は慌てて答える。

「あ、違うの。彩乃が……大和は変態だから色んな事されるよって言ってて……。
だから、本当に変な……その、一般的じゃない事望んでたらどうしようって思って……それで……」


< 68 / 84 >

この作品をシェア

pagetop