恋する季節 *- confession of love -*


「今ね、黒崎の取り巻きたち、誰が黒崎と花火見るかとかで揉めてるの。黒崎がお化け屋敷パスするから、余計に花火こそはって燃えてるみたいで。
丁度いいからこの間に抜け出しちゃいなよ。
奪い取るって言ってたじゃない」

にっと笑いながら言う彩乃に一瞬黙った美琴だったが、その提案にコクリと頷く。
空は真っ暗で、もう誰に聞いても夜と答える時間帯。つまり、美琴が大和を奪い取る時間だ。

「もうすぐお化け屋敷に入った最終組が出てくるだろうから、それまでにどこかに姿くらましちゃえばきっと見つからないし」

そんな事を話しているところに、男子へのお説教と厳重注意および脅しを終えた大和が戻ってくる。

「俺がいない間、誰も近づいてこなかったか?」
「黒崎が行ってからまだ数分しか経ってないじゃない……。
それに、どうせあの男子脅しながらチラチラ様子見てたんだから分かるでしょ。
それより、早く美琴とふたりで抜け出した方がいいって話してたのよ」
「え……っ」

いいのか?とでも言いたそうにパっと表情を明るくする大和に、正直な男だなと呆れ笑いをしながら彩乃が続ける。

「もうすぐお化け屋敷に入った最終組が出てくるハズだから、それまでにどこかに……あ、観覧車とかいんじゃない?
ここの観覧車、確か一周15分くらいかかるから一周して下りてくる頃には花火が始まってるし。
そうすればみんなの目も花火に移ってるから逃げ出しやすいでしょ」
「……おまえ、すげぇな」

本気で感心している様子の大和に、彩乃がふふっと微笑む。


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