絶滅危惧種『ヒト』
《俺にも見せてくれ》


アレックスが待ちきれずに、ケビンの身体を押す。



《おいおい。ちょっと待ってくれよ》


ケビンは仕方なく席を譲った。


電子顕微鏡を覗きこんだアレックスも、思わず感嘆の声をあげる。

氷の中に閉じ込められていたと思われる細菌が、悪魔の細菌をまさに食していたのだ。


《間違いない。コイツが腸に住み着いていて、悪魔の細菌を喰ってるんだ。だから彼らは発病しないんだ》


《ああ、間違いないだろう》


興奮したアレックスに向かって、ブライアンが頷く。


《コイツのお陰で、どうやら俺たちも死ななくてすみそうだな》


ケビンがホッとしたように微笑んだ。


《よし、じゃあすぐに作業に取り掛かろう》


ブライアンの提案で、一斉に作業が開始される。


残されている氷は少ないから、培養して殖やさなければならないのだ。

この新型細菌を培養すれば、人類を救うことが出来る。


全員が期待に胸を膨らませていた。


まずジョディーが、氷を溶かすために、幅の広い容器の上に水筒から氷を取り出す。


《どうやって溶かしましょうか?》


新細菌の情報がまだないから、下手なことは出来ない。


《焦らずに自然に溶けるのを待とう。その間に今採れているそれを調べよう》


ブライアンは電子顕微鏡にセットされているモノを指差した。


《そうだな。まずはコイツのことを調べないとな》


ケビンはもう一度電子顕微鏡を覗き込む。

何とこの短時間で、悪魔の細菌は影も形もなくなっていた。

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