絶滅危惧種『ヒト』
《おい! こいつはスゴイな。もう全部喰っちまったぜ……でも……》


《おいケビン。でもって何だよ?》


アレックスが聞く。


《いや、氷の細菌も動いてないから……》


《えっ? ちょっと見せてくれ》


アレックスが覗き込むと、確かに悪魔の細菌がいない代わりに、氷の細菌が動かなくなっているのだ。


《腹が減ってるのかもしれんな》


ケビンはそう言うと、培養してある悪魔の細菌をもう一度動かない氷の細菌の中に入れてみる。


《どうだ? エサをもらえて喜んでいるか?》


《いや、変化なしだ》


それに対して、アレックスは首を横に振った。


《まさか死んでしまったのか?》


《う~~~ん。その可能性が高いな》


《そんな……》


ケビンは信じられないという思いで、首をゆっくりと左右に振った。


《乾燥しているわけでもないのに、こんなにすぐ死んでしまうなんて》


アレックスがブライアンを見た。


《どういうことだろう? 温度かな?》



《イヤ、人間の体内で生きているなら、氷の状態から37度くらいまでの温度には耐えうるだろ》


《じゃあ何だ?》


《空気かな? 凍った状態から溶けてすぐに、人間の体内にいないとダメってことじゃないか?》


《しかし、胃の中にだって空気はあるだろう》


ケビンが口をはさむ。


《それは……例えば胃液の中なら大丈夫とか》


ブライアンも自身なく首を捻りながら答えた。

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