絶滅危惧種『ヒト』
《とにかく氷はこれだけしかないから、失敗は許されないわね》


ジョディーが不安そうに口をはさむ。


《綾乃、君のうちにはまだあるんだよね?》



《あるけど……少ないわ》


ケビンに質問されて、綾乃が答えた。


《すぐにアメリカ政府に連絡をして、南極に獲りに行かせた方が良いな。連絡しよう》


ブライアンが全員の顔を見回す。


《おいおい。南極までは飛行機じゃ行けない。船で往復して獲って来るのに、何日かかると思ってるんだ》


すぐにケビンが反論した。


《しかし、コイツが培養出来ないとなると、新たに獲ってこざるをえないじゃないか》


《そりゃそうだが、南極から氷が届く頃には、俺たちは死んでるだろう》


《それは、まぁ、確かに……》


ブライアンは腕組みをした。


《ねぇ、ここにある物と、私の家にある物を、まず皆さんで召し上がるっていうのはどう?》


綾乃が提案する。


《え?》


ケビンが聞き返した。


《アナタたちが死んでしまったら、人類が助かる可能性が、また低いものになってしまう。だからまず、アナタたちだけでも、氷を口にして死なないで欲しいの》


《そ、それは……》


ケビンが三人の顔を見回す。

それに対して、三人は互いの顔を見合わせて頷いた。

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