妄想ガールの王子様
「……あ、それって一眼レフ?」

春田くんはわたしが妄想をしている間にカメラを取り出していたみたいだ。

「そう。俺の宝物」

すっと目を細めてカメラの調整をする春田くんはさっきまでの穏やかな雰囲気じゃない。

ーー邪魔したらいけない。

わたしは黙ってカメラを構える春田くんを見ていた。

空気まで写そうとしている真剣な表情。

彼の真っ白なTシャツが潮風にはためいている。

わたしはただ彼のそばでじっとその様子を眺めていた。

オレンジ色の夕陽が夏の空と海を深く染め上げる。

雲が複雑な模様を描いて春田くんはそれを追いかけるようにカメラシャッターを切っていく。

今しかないこの時を残すように……。

美しい瞬間を切り取るように……。
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